「あなたがたは、この世ではなやみがある。しかし、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝っている。」(ヨハネ福音書16章33節)
これは多くの人たちに励ましを与えてきた言葉である。先日もこの箇所を瞑想しているうちに大きな恵みを受けた。ここの「勇気を出しなさい」と言われる背後に、「イエスさまはすでに世に勝っているから」という理由が述べられている。ではイエスさまは、どうやって“世に勝った”のか? 前の32節にそれが語られている。「あなたがたは散らされて、それぞれ自分の家に帰り、わたしをひとりだけ残す時が来るであろう。いや、すでにきている。しかし、わたしはひとりでいるのではない。父がわたしと一緒におられるのである」 簡単に説明すると、ローマの軍隊がイエスさまを捕らえにやってきた時、3年半共に過ごし「私だけはつまずきません!」と豪語していた弟子たちは、恩師を見捨てて皆逃げ出します。一人残され、孤独と悲しみに陥ったイエスさまの励ましは、「天の父なる神さま」だけは、その苦悩の中でもご一緒くださっていることを知ることだったのです。家族がいても、友人がいても、本当の自分のことを理解してくれる人はいないという孤独が人にはあります。でもそんなこの世の悩みに対して創造主なる神が、いつもご一緒してくださり、理解し励ましてくださっていることを知ることが勝利の秘訣なのです。
一人の母親が8歳の娘を白血病で失いました。亡くなる時期も近い、ある夜に、消灯時間が過ぎても寝つかれないでいる、その子のために、若い看護師が本を読んであげたそうです。やがて静かな寝息をたて始めましたが、その看護師は、なおも30分近くベッドサイドにいました。その子供の死後、その子の母親はこう語りました。「あの子がその夜、ふと、うす目を開けてみたら、まだ看護師さんが傍らにいてくれた。『眠らせるためにだけ本を読んでくれる人が多いのに、本当にうれしかった』と言っておりました」
イエスさまは、寝てから30分どころではなく、いつもいつまでも、「大丈夫、安心せよ」と、傍らで私たちを励ましてくださっているのです。