金井由信先生が著書の中でこのようにお証ししておられます。
 1953年4月、神学校で勉強するために地方から出てきた私には、お金がありませんでした。一学期が終わった時、二学期の勉強にどうしても必要な新しい本が出て、これを参考書として使うから買っておくようにと言われました。値段は350円でした。しかし私にはその時10円のお金もありませんでした。そのころ、教会や幼稚園の子ども会でお話しした時に謝礼としていただいた分の十分の一を、神さまに献げる為、小さな紙箱に入れて貯めておいたものがありました。調べるとその箱に400円入っています。「しめた」と思いました。でも、その時「これは主のために特別に分けておいたお金だから、自分のために使ってはいけない」「ちょっと、借りておいて、後で返せば良いではないか」という声も聞こえてきました。二つの声にはさまれて困り、裏山へ行って祈りましたがハッキリしませんし、本を買うお金は、なかなか与えられません。 
 ついに8月の最初の金曜日にあの400円を握りしめて神戸のキリスト教書店へ出向きました。途中まで来た時、突然ハッキリと神様のみ言葉が聞こえてきました。「神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加えて、これらのものはすべて与えられます」というみ言葉でした。私は心の耳をふさぐようにして書店へ急ぎました。お店の入り口の戸を開けた時、真っ先に目に留まったのは、日めくりのみ言葉のカレンダーで、なんと「神の国とその義とをまず第一に求めなさい・・・」と、書いてあったのです。私の足は前に進みません。結局、何も買わずにすごすごと神学校へ戻りました。涙がとめどもなく流れてきます。「神様! どうして、お金のことで苦しまなければならないのですか・・・」また、涙が溢れてきました。学校への坂道で大阪湾を眺めながら、浜辺で育った私はそのまま故郷へ帰ってしまいたくなりました。日が落ちて、薄暗くなった部屋のベッドにひっくりかえっていると、故郷の人たちの顔が次々と浮かんできます。私は、「やっぱり祈ろう」と、机の前にひざまずき、電灯をつけると、机の上に新聞紙の包みがおいてありました。その上に「天より」と書いた小さな紙がのっています。開けてみると、何とそこには、ピカピカの新しい、あの本が置いてあったのです。込み上げてくる感動に私はオイオイ泣きました。栄光在主。