先日、アフガニスタンで復興支援中に狙撃され亡くなった日本人ドクター中村哲氏は、今から35年前に国際医療NGOの医師としてパキスタンに派遣されました。そこで出会ったのが、戦争が続くアフガニスタンから逃れてやってきた難民たちでした。彼らは、故郷に戻っても医師も診療所も無いことを知り、「目の前で困っている人を見捨てるわけにはいかない」と、アフガニスタンで診療所を開設し医療活動を開始されました。しかし、医療を施しても、干ばつで水がなく、あっても汚染された水によって死んでいく子どもたちがたくさんいる状況の中で、診療所が100あるより用水路を1本作ったほうが良いと、白衣を脱いで、土木を勉強し、用水路の工事に取り掛かりました。現在では27キロに及び、3500ヘクタールの土地がその恩恵を受けている。用水路が引かれた村では、「これで、われわれは生きていける」と皆が喜んで話すという。そして中村氏は、自分の子どもを幼くして亡くした時に、葬儀でこう言われたそうです。「人は長く生きれば良いものではない。私はアフガニスタンで、たくさんの幼い子どもたちが死んでいくのを見てきた。生きていること自体が与えられた恵みなのだ」と。
 何年か前に、NHKで中村氏の活動のことが取り上げられ、私は非常に感銘を受けていました。そして今回の事件を、残念に思うと同時に、犯人たちに対する憤りが起こりました。しかし今回、中村氏は学生時代に受洗したクリスチャンであることを知り、その考えが変わりました。中村氏は、アフガニスタンでの働きをするにあたって、そのような危険に遭遇することは百も承知していたことを考えるならば、彼は今、こう考えていると確信しています。「私は敵や悪者によって殺されたのではありません。主が『お疲れさま!』と、命を取られたのです。主よ、どうぞ彼らを赦してください。彼らは何をしているのかわからずにいるのです。」勿論、悪は裁かれなければなりません。しかしその悪に私たちが振り回される必要はないのです。永遠の世界を信じる者は、何が起こっても、安定した道を歩むことができるのです。