小説『氷点』の著者として知られている三浦綾子さんは、エッセイの中で、「恵みに慣れるということは恐ろしいことだ」という言葉を残しています。そこで、彼女は、「神さま、どうか恵みに慣れてしまわないように助けてください」と祈り、自分の夫について、このように語っています。「最初は病弱な私と結婚してくれた夫がとてもありがたかった。しかし、結婚生活に慣れた今、私は最初のそのありがたさをすっかり忘れてしまい、夫に腹を立てたり、自分勝手な行動をする、わがままな妻になってしまった。慣れるというのは、本当に恐ろしいことだ」
 私は以前に、「毎日が奇跡の連続です!」とメッセージしたことがあります。私たちは、“当たり前”が、実は“恵み”であることを、どれだけ感じながら生きているでしょうか? ある先生が、心臓発作で倒れてから奇跡的に回復されて、このように話しておられました。「毎日毎日は、神さまからのボーナスです。」死んでいたはずの自分が、生かされている・・・これは神さまからの恵みだと考え、一日一日を大切に生きることができるようになった、とのこと。
 私たちは、毎日当たり前のようにして起き、家族や友人と接し、食事をして、仕事をして、遊んで、学んで寝る、ということをしています。しかし、当たり前のことができなくなることによって、その当たり前が、どれだけ恵みであったかと知ることになります。そこで私はこう考えました。失ってから、昔の恵みを思い返すよりも、“今”という瞬間瞬間を感謝しながら生きたら、もっと違う人生になるのではないかと。ですから私は、階段を上りながら感謝し、車を運転しながら感謝し、食べ物を美味しく食べることができることに感謝し、歩けることに感謝するようにしました。すると何とも言えない喜びが溢れるようになりました。
 ある方が、「神さまの教えとは何ですか?」と問われたら、当たり前のことを、心を込めて実行すること。与えられる一つひとつの命も、物も両手でいただくこと」と答えるでしょうと、書いておられたのを読んだことがあります。毎日、心を込めて悔いのない人生を送りたいものです。