弁護士のササキ・アイザック・ミツオさんの体験談です。
 だいぶ前のことだが、シリアのダマスカスからインドのボンベイ行きの飛行機に乗った。かなり古いスイス航空の4発プロペラ機である。空港から飛び立つと、窓には何の変哲もない砂漠が連綿と続くばかりだ。あまりにつまらないので居眠りをしていたが、エンジンの異常音で目が覚めた。見ると機体左側の2発のプロペラエンジンからもうもうと黒煙が立ちこめ、火炎が噴き出していた。あわててスチュワーデスを呼んで、「大丈夫か?」と尋ねたところ、「ドント・ワォリー! ダイジョーブ!」と、英語と日本語で言い、機長に報告に行った。次第に機体は傾き、グングンと高度が落ちていった。機内アナウンスで「エンジンにトラブルが発生しました。機体を25度傾けます。上昇気流を避けるため高度を地上100メートルに下げますが、心配ありません」と発表された。引火爆発を避けるため燃料用ガソリンタンクを機外に投棄し、エアコンもストップした。灼熱の砂漠の上をすれすれに飛んでいるので機内温度は摂氏60度を越えた。それでも、スチュワーデスは顔色ひとつ変えずにニコニコして座っている。こんな機体の姿勢で安全に着陸できるのかと非常に不安になり、死を覚悟した。空港に近づくと、数台の化学消防車やテレビ報道者が待機している。もうダメだと思った。きっと、「飛行機爆発・乗客全員死亡」と報道されるに違いない。着地と同時に機体は消化剤の一斉放射を浴びた。だが無事だった。冷静なスチュワーデスのおかげで、乗客は大きなパニックに陥らないですんだ。乗客の一人が「なぜ、あんなに平気でいられたのですか?」と彼女に質問した。彼女は笑顔で、“Because I believe in Jesus!(イエスさまを信じているからです)”と答えていた。なぜイエスを信じるだけで、あれほど平安でいられるのか。イエスを信じるまで、私はこの言葉の意味がわからなかった。
 インド洋のモルジブ諸島に飛んだときに、乱気流で墜落してしまうのではないかと思うほどの機内で、怖くなって平安を求めて聖書を読むと「あなたがたは心を騒がしてはなりません。神を信じ、またわたしを信じなさい」というイエス様の御言葉に不思議に恐れが完全に消え去って「あぁ、全能の神がおられる。だから大丈夫だ。たとえ死んでも、私には行くところがある」と思った。 

 「恐れるな!わたしである」(聖書)