イギリスの田舎の村に、母親とその息子が住んでいました。働き盛りの父親が急病で亡くなってからは、引越しして、町外れの狭い家に移り、貧しい生活をするようになりました。母親は、ビルの掃除やよその家の手伝いや、縫い物の仕事などを引き受けて、夜遅くまで働いていました。少年も朝早くから新聞配達をして家計を助けていました。辛くて苦しい毎日が続きました。しかし、二人は毎日出かける前に聖書を開いて、お祈り賛美をしていましたから、心はいつも喜びに満ちていました。やがて、少年は成長して、難関を突破して見事に歴史のある都会の名門大学へ入学することができました。何年か経過して、卒業するときがきました。彼はなんと首席で卒業することになったのです。彼はみんなの前でスピーチをして、その後、国王から金のメダルが贈られることになっていました。彼は母親に手紙を書きました「お母さん! 長い間、本当にありがとうございました。金メダルをいただくことになりました。是非卒業式には出かけてきてください」しかし、実際のところ、その母親には、そこへ行くお金も着ていく晴れ着もありません。大変悩みましたが、せっかくの卒業式なので、なんとか旅費だけは工面して、いつもの色あせた服を着て卒業式に出かけました。大学へ着くと、広い式場はいっぱいの人です。やがて卒業式のプログラムは進み、青年は名前を呼ばれて前へ進み出ました。国王から金のメダルを受け取ると、すぐにみんなの方を振り向き、こう言いました「みなさん、この金メダルは、私がもらうべきものではありません。これを受けるのに一番ふさわしい人は、ここにいます!」そう言って、舞台から降りて、満員のホールの隅で小さくなっている母親のそばに行き、恥ずかしがる母親の手を引いて、舞台に戻りました。そしてこう言ったのです「お母さん! これはお母さんがいただくべきものです。お母さんの苦労のおかげで、ここまでくることができました。本当にありがとう!」そして、そのメダルを首にかけてあげました。式場に集まっていた大勢の人たちも、感激して涙を流し、拍手がいつまでもホールに鳴り響いていたそうです。

 私たちは上手くいくと、すぐ高慢になってしまいますが、神の手の中で育まれていることを信じるなら、もっと豊かな人生になるでしょう。