小学校の劇などでも用いられている「花さき山」というお話があります。アヤという女の子が、祭りが近づいているので母親から山菜を取ってくるように言われて、山の中へ入っていきました。奥のほうへ進んでいくうちに、見たこともないような綺麗な花が、一面に咲いている花園へ来ました。そこでヤマンバと出会います。ヤマンバ「どうしてこの花、こんなに綺麗なのか知ってるかい? この花は、ふもとの村の人間が優しいことを一つすると一つ咲く。ほら、そこにもまた、花が咲いた。そのつぼみは誰かが今咲かせようとしているんだ。そこに、露を乗せて咲きかけてきた小さい青い花があるだろう? それは小さな双子の赤ちゃんの上の子の方が、今咲かせているものだ。その花は兄弟といっても、同じ歳のわずかな後先で生まれたものが、自分は姉ちゃんだと思ってじっと我慢している。妹は、母親のおっぱいを飲みながら、片方も手で押さえて放さない。そのとき上の子は、それをじっと見て、自分は姉ちゃんだから一生懸命、我慢している。目に涙をいっぱいためて・・・その涙がその露だ。この花さき山、一面の花は、みんなこうして咲いたのだ。」
 山菜を採りにくる前に、アヤとお母さんの間にこのような会話がありました。母親「今年の祭りもにぎやかになりそうだなぁ」アヤ「私も綺麗な浴衣を着て行きたいなぁ」「そうだね。アヤも大きくなったから、今年は新しい浴衣を買ってやろうか?」「本当に?! 嬉しいなぁ!」それを聞いていた妹が言いました「私もみんなのように赤い浴衣買ってよ~」とダダをこねました。二人には買ってやれないお母さんは困りました。その時、アヤは言いました「お母さん、私はいらないから妹に買ってやって」・・・ヤマンバは言いました「その花は、お前が咲かせた花だ。自分は我慢して、お母さん、私はいらないから妹に買ってやれ、と言ったとき、お母さんは、どんなに助かったか・・・妹はどんなに喜んだか・・・お前はせつなかっただろうけど、あの赤い花が咲いた。あの赤い花は、どんな祭り着の花模様より綺麗だ!」

 天に宝を積むとは、これに似た世界があるように思えてなりません。