「自分を振り返る鏡」というタイトルのお話です。
 ある町に不満ばかりを言っている人がいました。誰も彼の不満や愚痴から逃げることはできませんでした。ある日、彼は道で旅人に出会いました。やはりその旅人も、彼の隣人に対する不満を聞かされました。「今まで、これほど醜い人たちは初めてですよ。町の人たちはみな、人を助けることを知らず、利己的です。何より悪いのは、互いに中傷するのを止めないんですよ。」
 実は、その話を聞いていた旅人は天使でした。天使が聞きました。「それは本当ですか?」 男は答えました。「私の言うことが信じられませんか?」 するとその男が続けて言いました。「ほらほら、向こうから歩いてくるあの男を見てくださいよ。名前は知らないけど、顔は知っていますよ。あの小さくて切れ長の目、唇には貪欲があふれ、背中を丸めて、ずる賢くペコペコしていますよ。歩いているというより、こそこそと這っているようですね。」 天使が言いました。「あなたはすべてを把握していますね。大変頭の良い方ですね。しかし、あなたには一つ見えていないことがあります。あれは鏡なのですよ。そして、あなたが非難していたあの男は、あなた自身なのです。」

 「他人は自分を映す鏡」と言われます。他者が自分のことを大切にしてくれないと感じる時、実は自分も他者を大切にしていない。また他者の対応に不満を持つ時、実はその対応こそ自分が相手にしている対応であることが多いそうです。
 マザーテレサの愛した祈りの中に、「慰められるよりも慰めることを、理解されるよりも理解することを、愛されるよりは愛することを」というのがあります。私たちは誰かから慰められること、理解され、愛されることを求めています。でも、本当は他者に与えていく人生の方が、幸せなのでしょうね。私たち自身の総点検をしなくてはいかなければ・・・。
 「受けるより与える方が幸いです。」(使徒行伝20章35節)